人とクマ類(ヒグマとツキノワグマ)との軋轢を考える上で,人身事故は社会にもっとも大きな影響を与える脅威といえます。
ツキノワグマによる人身事故の被害者数は,2004年に109人(内2名死亡),2006年に145名(内3人死亡),そして2010年は147名(内2名死亡)と増加傾向にあります。 ヒグマについても,人身事故件数は少ないものの,死亡事例を含めた重篤な事故が発生しています。
しかし,これまで全国規模の系統立てたこうした状況に関する調査研究は行われて来ませんでした。
日本クマネットワーク(JBN)では,地球環境基金(独立行政法人環境再生保全機構)からの助成を受け,ネットワーク機能を活かしてクマ類による人身事故事例を可能な限り収集して,事例解析に取り組むことに挑戦しました。
3年間をかけて(2008年度~2010年度),全国スケールで人身事故の特徴を明らかにした上で,各地方での詳細な事例や特徴についての取りまとめを行いました。また今後の適切な情報収集に向けて,人身事故情報の収集・ファイリングのためのマニュアルの作製を行いました。
また現状では,人身事故に関する情報の収集と解析,またその結果の管理施策への還元は各自治体に任されています。
そのため,全国規模での統合的な情報収集体制の構築が必要であり,環境省がコーディネーターとしての役割を担うことを期待する旨の要望書を,2011年5月26日付けで環境大臣に対して提出しました。