JBN学生部会企画 ~私のクマ研究・活動紹介~ 第4回
【ヒグマは人工林でセミ幼虫を食べる】
北海道大学環境科学院博士2年 富田幹次
北海道知床半島の一部のヒグマは、夏になると地面を掘り返してセミの幼虫を食べます。ヒグマは色々なエサをとることが知られていますが、セミ幼虫を食べることは世界でもぜんぜん知られていませんでした。私は、なぜヒグマがセミ幼虫を食べるようになったのかを明らかにするために、フィールドで泥臭く研究しています。ヒグマの気持ちになって地面を掘り、セミ幼虫を探したり食べたりしているので、文字通りの「泥臭い研究」です。
この研究では、ヒグマがどういった場所でセミ幼虫を食べているかを、クマの掘り跡を調べることで明らかにしました。その結果、ヒグマは人工林を集中的に掘ってセミ幼虫を食べており、天然林を全く掘っていないことが分かりました。さらに、人工林ではセミの幼虫が天然林よりも10倍以上見られました。人の手によって生み出された人工林でセミが沢山発生し、ヒグマのエサ場になっているようです。人工林は天然林よりも野生動物の生息地として価値が低いと考えられがちですが、必ずしもそういうわけではないという知見が得られました。
論文
Tomita, K., & Hiura, T. (2020). Brown bear digging for cicada nymphs: a novel interaction in a forest ecosystem. Ecology, 101(3), e02899. https://doi.org/10.1002/ecy.2899
—
本稿はJBN学生部会企画 ~私のクマ研究・活動紹介~ の一環で執筆されました。企画についてはこちらをご覧ください。